











2021/日本・カンボジア/カラー/ステレオ/27分


Introduction
2020年暮れ。コロナ禍のカンボジアの小さな町にカメラが降り立った。
パンデミックによってシルク・ドゥ・ソレイユが閉鎖に追い込まれ、世界各地でエンターテイメント興行は大きな打撃を受けていたことは記憶に新しいが、普段私たちのもとには届くことのないコロナ禍のストーリーは世界中にたくさんある。この映画はカンボジアのサーカス団(Phare Ponleu Selpak)が実際に経験したパンデミックの境遇を基に映画化された。映画に登場するのは実際のサーカス団員や家族、街に生きる人たちであり、カンボジアサーカスの生き様が瑞々しく映し出されている。
本作品は2021年の上海国際映画祭において日本作品で唯一コンペティション部門に選出され、「少年の夢と忍耐、家族の困難を乗り越える姿を現実的かつ感動的に描いた」と評された。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭では、 国内コンペティション(短編部門)で史上初となる2冠(優秀作品賞、観客賞)を受賞。 その他、本年度から米国アカデミー賞公認となったテヘラン国際短編映画祭(イラン)やifva awards(香港)でコンペティション作品に選出されれるなど、少年達の物語が世界各国から共感を獲得している。
サーカス団(Phare Ponleu Selpak)は今もなお苦境に立たされている。この映画は、人々に希望を与えるカンボジアサーカスの存続を願いながら、この度映画の公開をさせていただきます。

Story
舞台はカンボジアサーカスの発祥の地、バタンバン。
この街のサーカスは、人々へ笑顔と生きる力を与え続けてきた。
ある日、保健局の要請によりサーカス学校は閉校を余儀なくされ、生徒達は突然夢を絶たれる。
さらに父からの仕送りが止まってしまったティアラは、サーカスをあきらめ、働き始める。
仲間の少年たちはサーカスの再開を信じ、ティアラに想いを馳せながら練習を続ける。
彼らはパンデミックによってサーカスを奪われてしまうのだろうか。
彼らはそれを阻止し、走り続けられるのだろうかー

Cast

ティアラ
ノブ・リーヘン
Nov Lyheng
親方
プレアブ・ポウチ
Preab Pouch
サーカス学校(Phare Ponleu Selpak)出身で現在はシェリムアップのPhareサーカス団で活躍。大きな体で空中技を支える役割をこなしつつ、コミカルな演技で会場を笑いに包むPhareのスター。このコロナ禍においてはリーダーシップをとり団員の精神的な存在でもある。2児の父。


ダラ
ダラ・ヘン
Dara Heng
サーカス学校(Phare Ponleu Selpak)に通う三兄弟の末っ子で、バタンバンサーカスのスター。本映画で登場する場面は限られているが、撮影では少年達のメンターとして現場に付き添い、彼らの演技を影で支えた。2017年にアンジョリーナ・ジョリーが監督した「最初に父が殺された」では、主人公・ルオンの兄役として出演している。
ヴィレク
シン・ヴィレク
Sin Vilex
以前サーカス学校に通っていたが、家庭の事情で退学しバイク屋で働いている。昼間にバイク屋での仕事で働いた後、撮影に参加していた。彼が乗るYAMAHA製のバイクはおじいさんの形見であり、自分で修理をしながら大事に乗っている。


仲間の少年たち
ティアラを支える仲間の少年たちは、全員サーカス学校に通っており、実際に普段から一緒に生活する仲である。この映画は彼らにインスピレーションを受け作られたと言ってよい程、眩しい存在である。

Staff
脚本・監督:逢坂芳郎
北海道・十勝出身。四季と自然豊かな故郷で18歳まで過ごしその後渡米。ニューヨーク市立大学ブルックリン校で映画制作を学び学士号を所得。日本帰国後、東京と北海道を拠点として、映画、ドキュメンタリー、コマーシャル制作をしてきた。近年はアジアを舞台としたプロジェクトに積極的に参加しながら自身を研鑽している。
エグゼクティブプロデューサー:Ryan Barton Kanamoto (ライアン・バートン・カナモト)
米オハイオ生まれ。広告のクリエイティブを経て、2018年、NGO団体Minor Actを設立し、日本とカンボジアと拠点にアートや文化、人権をテーマとした映像、舞台を手がける。その過程でPhare Ponleu Selpakと数年に渡り親交を深め「リトルサーカス」制作のきっかけをつくった。
プロデューサー:Ines Sothea (イネス・ソテア)
プノンペン生まれ。監督、脚本家、プロデューサー。2021年ロカルノ映画祭で今後の活躍が期待される東南アジアのフィルムメイカーを招聘したOpen Doorに選出される。本作品では脚本の翻訳からワークショップ、現場では助監督と幅広く監督をサポート。2022年には自身が監督する新作の制作が控えている。
撮影監督:松尾真哉
山口県出身。東京を拠点にコマーシャル、映画を中心に撮影している。自主制作である本作品のために日本からカンボジアへ渡り、2週間の隔離生活を経て撮影初日の2日前にバタンバンに到着した。機動力を重視して撮影助手はつけず、ほぼレンズ一本で撮りきった。門真国際映画祭では最優秀撮影賞を受賞した。
録音:Thideth Him (ティデス・ヒム)
プノンペン空港の目の前の住宅街に生まれた。19歳で初めて乗った飛行機で韓国・釜山へ渡り東西大学校で映画制作を学んだ。現在はプノンペンを拠点に、撮影監督、エディターを中心として活動している。本作品では録音を担当しながら、撮影のサポートを兼務していた。
音楽:里ロビン
英国・ロンドンに生まれ、大阪で育つ。イギリスの音大、LIPAを首席で卒業後、ベルリンで様々なバンド活動を開始。4枚のアルバムとヨーロッパツアーの後、日本に戻り音楽制作会社GARDENERS CLUBを設立。2022年より拠点を奄美大島に移す。
ポスターデザイン:Koeurm Kolab
画家。教師。活動家。Phare Ponleu Selpakのビジュアルアート科を卒業した後、プノンペンの王立美術大学で博士号を取得。現在は当校でグラフィックデザインとアニメーションの教師を務めている。彼女の作品は、人間性、社会の変化、環境の変化を探求しており、2020年にはSocial Compass Cambodia が主催する White Canvas Cambodiaで金賞を受賞している。

Comment
少年の夢と忍 耐、家族の困難を乗り越える姿を現実的かつ感動的に描いた
上海国際映画祭
すごく意義のある映画だったと思います。(中略)
エネルギー、躍動感に満ち溢れている。
「コロナごときでは青春はぶった切れない。僕ら大人だって」
という気持ちなれました。
高橋泉(映画監督・脚本家)
SKIP シティ国際 D シネマ映画祭 審査コメント
コロナによって閉鎖されたサーカス学校の苦悩を実在する人々とともに撮りあげた、これまで見た中で最も印象深い「パンデミック映画」だ。
Panos Kotzathanasis
Asian Movie Pulse
発展途上国では経済的な制約が故に、大多数の若者の夢は実現しない。夢の実現は、粘り強さ、運、技術、運命、そして潤沢な資金をうまく組み合わせた上流階級や幸運な一部の人たちだけのものなのだ。COVID-19は、こうした状況をさらに悪化させ、ただでさえ不安定な状況をさらに不安定なものにしている。
この映画が強調している重要なことは、芸術(この場合はサーカス)が若者たちに果たす役割である。私たちは皆、子供の頃の夢を実現することはできないかもしれないが、この自由と想像力を満喫できる年月があることは、私たちにとって忘れられない美しさである。そして、このことは、私たちの国の子供たちが夢を絶やさないように、そしてこの色彩に満ちたな青春時代をできるだけ多く子供たちに与えるという、私たちの責任にもつながっているのではないだろうか。
Sansitny Ruth
CHAKTOMUK SHORT FILM FESTIVAL (カンボジア)
逢坂芳郎監督は、学校とショーの閉鎖に立ち向かう若いサーカスアーティストたちの気持ちと感情を正確に捉えている。この映画は、若いアーティストたちが、長年の訓練で培ったレジリエンス(内なる回復力)を駆使して、パンデミックを生き延びる方法を見つけ、コロナ後の世界に希望を持ち続ける様子を描いている。
Osman Khawaja
Phare Ponleu Selpak (カンボジア)
